商品開発の原価とロット|1個と1000個は別の値段

作ってくれる会社が決まって、試作もできた。ここまで来ると、残っているのは値段を付けて売り出すことだけに見えます。
ただ、それだけでは売値はまだ決められないんですよね。同じ物でも、いくつ作るかで、1個あたりの単価がまるっきり変わるからです。
先日、建設の現場で使う道具を、自分で考えて形にした方とお話ししました。本業はものづくりではありません。それでも知り合いの鉄工所に頼んで、試作までは作っておられました。カタログも商品紹介の動画も、AIを使ってご自分で一通り用意されています。
商品としては、もう出せる形になっている。だから僕がお伝えしたのは、その手前にまだやることが一つ残っている、という話でした。
商品開発でいちばん大事なのは「いくらで作れるか」
物を作って売るとき、いちばん大事なのは、いくらで作れるかだと思っています。
形も、使い方も、売り方も、こちらで考えて決められます。でも、1個あたりいくらで作れるのか。この単価だけは、作ってくれる会社に聞かないと出てきません。自分では決められないのに、そのあとの判断は全部この数字次第です。
売値も、作る数も、この数字が出るまでは決められない。単価を知らないまま売値を決めると、順番が逆になってしまいます。
聞くのは「何個で、いくらか」
「1個いくらで作れますか」。作ってくれる会社にそう聞くと、逆にこう聞かれます。
「ロットはいくつですか」
一度に何個まとめて作るのか、という質問です。ここで詰まる人は多いと思います。何個売れるかがまだ分からないのに、作る数なんて決まっていない。
ただ、この逆質問は意地悪でも何でもありません。材料は、まとめて買うほど安くなることが多いですし、機械の段取りみたいな「最初の一回だけ要る手間」は、数で割れば1個あたりが軽くなる。1個だけ作るなら、その手間を1個で丸ごと背負うことになります。だから、数を言われないと単価が出せないんですよね。
同じ物でも、1個作るのと、10個作るのと、1000個作るのとでは、1個あたりがまるっきり変わる。単価は、数とセットでしか出てこない。
とはいえ、その数を決めるために単価が知りたいわけです。数が決まらないと単価が出ない、単価が出ないと売値が決められない、売値が決まらないとどれくらい売れそうかも見えない。ここで堂々めぐりが始まります。
その方にお伝えしたのは、こういう聞き方でした。1個作ったら、いくらで作ってくれるのか。10個だったら。50個だったら。100個だったら。
一つの数字ではなく、ロットごとに見積をもらっておく。やることは、それだけです。
こうしておくと、作る数を決めないまま先へ進めます。あとで「じゃあ50個で」となったとき、その場で1個あたりの単価が分かる。売値をいくらにできるかも、そこから逆算できます。
もう一つ、「月に何個作れるか」
作ってくれる会社には、聞いておきたいことがもう一つあります。その相手が、月にどれくらい作れるのか。
今回のケースだと、頼んでいる鉄工所さんは、月に100個くらいが上限でした。それより多くなると相談になり、その方はよその工場もあたることになるかもしれません。
数をまとめるほど、1個あたりは安くなります。ただ、月に100個が上限なら、500個そろうのは5ヶ月後です。
安くしようとまとめるほど、そろうのは先になります。売り出したい時期が決まっているなら、まとめられる数にも上限が出てきます。
数量ごとの単価と、作れるスピード。この二つがそろって、はじめて「何個作るか」を考えられるようになります。
数えるのは、本体の製造費だけじゃない
原価は、作ってくれる会社に払う単価だけではありません。いちばん抜けやすいのは、商品そのもの以外に要るものです。
パッケージや、取扱説明書。物によっては、送るための梱包材も。本体ができても、これがそろわないと売り物になりません。そのうえで宣伝をするなら、広告の費用も乗ってきます。
今回の道具は金属のかたまりで、1個5kgほどありました。この重さになると、パッケージの選べる範囲が狭まります。薄い紙の箱では、持ち上げた時点で底が抜けてしまう。
先に決めているのは、中身の方なんですよね。「どんなパッケージにしようか」とデザインの話から入りたくなるんですが、その手前で重さがもう仕様を決めている。5kgの物には、5kgを受け止められる作りが要ります。
だから原価を数えるときは、本体の製造費だけでなく、周りに要るものまで含めておく。含め忘れたぶんは、そのまま利益から引かれます。
原価が5,000円かかる物を、3,000円で売りますと出してしまったら、売れるほど損をします。ここまで極端でなくても、数え落としが重なると、売れているのに手元に残らない、ということが起きます。
おわりに
いくらで作れるか。ここが決まらないと、売値も、作る数も、先に進みません。
そしてその単価は、数を言わないと出てきません。だから作ってくれる会社からもらうのは、一つの見積ではなく、ロットごとの見積です。
もし今、こんなところで止まっていないでしょうか。
- 試作はできたが、いくらで売ればいいのかが決められない
- 「ロットはいくつですか」と聞かれて、そこから話が進まない
- まとめて作るほど安くなると言われたが、何個で頼めばいいのかが決めきれない
三つとも、値段の話に見えて、じつは数の話です。
商品の企画やデザインが僕の専門分野ですが、メーカーで企画から販売まで担当していました。作る数は、先に決めてしまわなくても大丈夫です。ロットごとの単価と、パッケージや取扱説明書にかかるお金。この二つが手元にあれば、決めるのはあとでいい。そこをそろえるところから、お手伝いできます。よかったら、気軽に声をかけてください。
この記事は、実際の打ち合わせをもとにしていますが、お相手の会社名や商品の内容は伏せています。
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