はじめての商品化の進め方|地図はあっても、現在地が分からない

はじめて行く場所に、地図だけ渡されて「じゃ、あとはよろしく」と置いていかれたら、けっこう心細いと思うんです。地図はある。道も載っている。なのに、足が前に出ない。
先日、それに近い話がありました。
自分の仕事の困りごとを解決する道具を、はじめて自分で作ってみた方とお話ししたんです。ものづくりが本業の人ではありません。でも、自分のために、試作までは、ちゃんと作った。カタログや紹介の動画も、AIを使って一通り自分で作っておられました。
それでも、こうおっしゃるんです。「で、ここからどうしたらいいのか、正直まったく分からなくて」
商品化の進め方を調べた地図なら、もうネットに転がっているし、AIに聞けば教えてくれます。順番くらいは、すぐ出てくる時代です。なのに、進めない。足りないのは地図じゃなくて、別の何かなんですよね。僕はそれが2つあると思っていて。今日はその話を書いてみます。

その地図、「あなたの分」じゃない

手に入る地図は、たいてい万人向けです。
「一般的にはこういう順番です」は書いてある。でも、あなたのその商品の、どこが落とし穴で、どこは飛ばしていいのかまでは載っていない。当然で、その地図はあなたの案件を見て描かれたものじゃないからです。
たとえばさっきの方の場合も、作ったものには、そのものならではの事情がありました。でも、一般的な地図に「この種のものは、ここでこういうコストが効いてくる」なんて、個別の注意書きまでは書いていない。
そして何より、地図に「現在地マーク」が無いんですよね。
はじめての人がいちばん知りたいのは、実は「次に何をするか」より手前の、「で、今の自分はどこにおるの?」だったりします。全体のどのあたりまで来ていて、あと何が残っているのか。そこが見えないと、地図を広げても、自分を重ねられない。
情報としての地図はある。でも、自分専用の印が付いていない。これが、地図があっても消えない不安のひとつです。

完璧な地図でも、初めての道はこわい

仮に、その地図が完璧だったとします。順番も正しい、抜けもない。
それでも、初めて歩く道は、こわいんです。
知っていることと、実際に歩けることは、別なので。地図の上では一本道でも、はじめての人は一歩ごとに「ほんまにこっちで合ってる?」と立ち止まる。間違えたら後戻りできないんじゃないか、お金がムダになるんじゃないか。そう思うと、足がすくみます。
これは情報を足しても消えません。むしろ調べれば調べるほど、「あれもあるのか」「これも要るのか」と、不安材料のほうが増えていったりする。
さっきの方も、商品そのものは、試作としてはある程度まで形になっていました。作ってくれる先との話も、ぼちぼち進んでいた。でも、売り物として世に出すのは、まさにここから。地図でいえば、中盤まで来ているんです。なのに、その先の一歩が重い。情報が足りないからじゃなくて、初めての道だから、なんですよね。

だから、地図より、隣を歩く人

じゃあ何が要るのか。
僕は、地図そのものより、隣で「今ここですよ」と言ってくれる人だと思っています。
僕がやるとしたら、たぶんこういうことです。
  1. 出回っている一般的な地図を、その人の案件専用に引き直す。どこが落とし穴で、どこは気にしなくていいかを、その商品に合わせて書き直す。
  1. 現在地に印を付ける。今どこまで来ていて、次の分岐はどこかを、一緒に確かめる。
  1. その初めての道に、一緒についていく。
僕はもともと、メーカーの中で企画から販売まで、ひととおりの工程を自分で通ってきました。だから、はじめての人が「次どこ?」と止まりやすい場所が、だいたい見当がつくんです。先に歩いたことがある道なら、「この分岐は、あなたの場合こっちかもしれませんね」と、隣で言える。
地図を渡して終わり、ではないんです。地図を一緒に読んで、現在地を確かめて、一歩ずつ進む。はじめての商品化でいちばん効くのは、たぶんそこなんだと思います。

おわりに

商品化というと、つい「いい地図(=正しい手順)を手に入れること」だと思いがちです。
でも、地図はもう手に入る時代なんですよね。足りないのは、たぶん地図じゃない。その地図が自分の道に合っているかの確信と、初めての一歩を踏み出す心強さ。そこが埋まらないと、いい地図を持っていても前に進めません。
もし今、こんなところで止まっていないでしょうか。
  • ネットやAIで調べて、やる順番はなんとなく分かった。でも、それが自分の商品に当てはまるのか自信がない
  • 全体のどこまで来ていて、次に何をすべきかが見えない
  • 一歩間違えたらお金や時間がムダになりそうで、踏み出せない
どれも、地図はあるのに現在地が見えていないときに起きやすいことです。
僕は、商品の企画やデザインのお手伝いをするときも、はじめて世に出す方の伴走をするときも、まずこの「今どこにいるか」を一緒に確かめるところから始めることが多いです。もし似たような場所で止まっているなら、その整理から一緒にやれることもあると思います。よかったら、気軽に声をかけてください。

この記事は、実際の打ち合わせをもとにしていますが、お相手の会社名や商品の内容は伏せています。