プロダクトデザイナーのキャリア選択|勤務先の特徴と選び方

プロダクトデザイナーとして働く環境には、大企業、中小企業、デザイン事務所という3つの選択肢があります。それぞれの環境には独自の魅力や特徴があり、キャリア形成において重要な選択肢となります。
本記事では、それぞれの特徴、メリット・デメリットを実体験を交えながら詳しく解説します。
1. 大企業でのプロダクトデザイナー
特徴
大企業では、明確な分業体制の中で業務が進められます。プロジェクトには多くの人が関わり、デザイナーは主にデザイン業務に集中する形になります。その一方で、担当業務以外のプロセスが見えにくくなる傾向もあります。
実体験:担当業務以外が見えない極端な例
「他部署からの依頼で製作したモノについて、そもそもそれが何なのか、どのように使われるのか、結果がどうなったのか、全く分からないまま仕事を進めたこともありました。」
こうした状況は、分業体制が徹底されている大企業ならではの特徴と言えます。自分の仕事の成果がどのように役立ったのかを把握できず、達成感を得にくいことがあります。
メリット
- デザイン業務に専念できる
業務範囲が明確に分担されており、他部門の業務に煩わされることなく、デザインに専念できます。これにより、スキルを磨きやすい環境が整っています。特に、最新のデザインツールやリソースが豊富に使える点も魅力です。
- 安定した環境
大企業ならではの福利厚生や給与体制の整備により、長期的に安心して働けます。また、組織のスケールメリットを活かしたプロジェクトの進行は、予算や時間の余裕がある場合が多いです。
- 大規模プロジェクトに参加できる
全国的に展開される製品や、業界で注目を浴びるプロジェクトに関わる機会が多いです。完成品が市場に出た時のインパクトを実感できる点が、大企業ならではの醍醐味です。
デメリット
- 業務の幅が限定される
業体制が進んでいるため、製品全体に関わる視点が得にくく、特定の業務に限定されがちです。そのため、製品全体の流れや全行程を把握する機会が少なくなることがあります。
- 担当外の情報が見えにくい
他部署が進めているプロセスや課題について知る機会が限られるため、自分の成果がどのように活かされたのかを実感しにくい場合があります。
2. 中小企業でのプロダクトデザイナー
特徴
中小企業では、企画、デザイン、量産までの全行程を一貫して担当することが一般的です。フラットな組織構造のため、幅広い業務に関わる柔軟性が求められます。
実体験:新規ブランド立ち上げプロジェクト
「新規ブランド立ち上げのプロジェクトマネージャーを担当しました。売り先の棚割りで面を取るために必要なアイテム数を確保するため、外部デザイナーと協力しながらブランドコンセプト、デザイン、設計、量産を同時進行で進めました。大変でしたが、完成時の達成感は非常に大きかったです。」
このように、中小企業では幅広い業務を同時にこなす必要があり、責任も大きいですが、その分やりがいもあります。
メリット
- モノづくりの全体像を学べる
企画からデザイン、量産まで一貫して担当することで、プロダクト開発の全行程を深く理解できます。この経験はゼネラリストとしてのキャリアを築く上で大きな資産となります。
- 柔軟な働き方が可能
フラットな組織構造により、アイデアを提案しやすく、自分の意見がプロジェクトに反映されやすい環境です。柔軟性の高さが新しい挑戦を可能にします。
- 達成感が大きい
責任が大きい分、自分が主体的に進めたプロジェクトが成功した時の達成感は非常に大きいです。特に、新しいブランドの立ち上げや市場への製品投入は貴重な経験となります。
デメリット
- 時間やリソースが限られる
限られた予算やスタッフでプロジェクトを進める必要があり、効率的な働き方が求められます。この制約がプレッシャーになる場合もあります。
- デザインに専念しにくい
デザイン以外の業務(コスト管理や工場の手配など)にも対応する必要があり、デザイン業務の時間が削られる場合があります。
3. デザイン事務所でのプロダクトデザイナー
特徴
デザイン事務所では、案件ごとにデザイン内容が大きく異なります。クライアントによっては、マーケティングや販売戦略まで含めた幅広い提案が求められることもあります。
実体験:コンペの成功から継続受注へ
「クライアントによっては、コンペの結果をフィードバックしてもらえることがあります。とてもいい評価をいただけた時や、最初はコンペ案件だったものが継続受注につながり、その後名指しで依頼をいただけた時は、非常に嬉しかったです。」
コンペでの成功が次の仕事に繋がるという特性は、デザイン事務所ならではの醍醐味と言えます。
メリット
- 多様な業界経験が積める
医療機器や産業機械、日用品など、様々な業界の案件に携わることで、幅広い知識とスキルが身につきます。これにより、異なる視点からアイデアを生み出す力が養われます。
- クリエイティブな自由度が高い
クライアントのニーズを満たす中で、自分のデザインや提案力を最大限に発揮できる環境です。自由度が高い分、責任感も求められますが、それがやりがいに繋がります。
- 刺激的な環境
コンペ案件では、他のデザイン事務所との競争により、常に新しい視点やスキルを磨くチャンスがあります。特に、コンペでの成功がクライアントとの信頼関係を築くきっかけになります。
デメリット
- 事務所全体の売上が不安定
デザイン事務所は、案件ごとの収入構造に依存するため、クライアントからの発注量が減ると事務所全体の売上が不安定になるリスクがあります。特に、景気や業界動向の影響を受けやすい点はデザイン事務所ならではの課題です。
- 短い納期
複数案件を同時に進行する場合は、適切な時間管理が重要です。複数案件を短期間で進める必要があるため、時間管理能力が求められます。
- プレッシャーが大きい
クライアントからの期待に応えるために、質の高い成果物を提供するプレッシャーを常に感じる必要があります。
4. 比較表
項目 | 大企業 | 中小企業 | デザイン事務所 |
---|---|---|---|
役割 | 縦割りで専門性が高い | 一人多役で全行程を担当 | クライアントワーク中心、多様なプロジェクト |
リソース | 豊富で安定 | 限られている | 限られている |
メリット | デザインに集中できる安定した環境 | 全体像を把握できる柔軟な働き方が可能 | 自由度が高い多様な業界を経験 |
デメリット | 業務の幅が狭くなる場合がある。意思決定に時間がかかる | 各工程に専念する時間が少ない。負担が集中する場合がある | 短い納期。事務所全体の売上が不安定 |
適している人 | スペシャリストを目指したい人。安定志向の人 | ゼネラリストになりたい人。チャレンジ精神がある人 | クリエイティブな仕事を楽しみたい人 |
5. 結論
プロダクトデザイナーとして働く環境には、大企業、中小企業、デザイン事務所という3つの主要な選択肢があります。それぞれの働き方には、独自の魅力と課題がありますが、選択する際には以下のポイントを考慮することが重要です。
1. キャリア目標に基づいて選択する
- スペシャリストとして専門性を高めたい場合大企業が向いているでしょう。安定した環境でデザインスキルを磨くことができます。
- ゼネラリストとして幅広いスキルを身につけたい場合中小企業での働き方が適しています。全行程に関わることで、製品開発の全体像を把握できます。
- クリエイティブな自由度を求める場合デザイン事務所での働き方が魅力的です。様々な業界のクライアントと関わる刺激的な環境があります。
2. 働き方の柔軟性と責任感を考慮する
- 大企業では安定性と専門性に重点が置かれる反面、プロジェクト全体を俯瞰する機会が少ない場合があります。
- 中小企業では幅広いスキルを得られる一方、時間やリソースが限られることが多いです。
- デザイン事務所では多様な案件に関わる柔軟性があるものの、短納期や成果への責任感が求められます。
3. 全ての働き方を経験することで得られる学び
私自身、全ての働き方を経験しました。それぞれの環境で得た経験は、現在のキャリアにおいて大きな財産となっています。もし可能であれば、複数の働き方を経験することで、自分に最適なキャリアの方向性を見つけることをお勧めします。
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