商品開発の打ち合わせ|教わる場から、自分たちが話す場に変える

打ち合わせの場面のイラスト。壁に貼った紙に書き込みが並び、2人が立って書き足している。少し離れた場所に、もう1人が座って見ている。
打ち合わせが終わってノートパソコンの画面を閉じたあと、「今日も僕ばっかり喋ってたな」と思う日が、しばらく続いていました。
相手は、ものづくりをずっとやってこられた会社さんです。その社内のお2人が新しいブランドを立ち上げようとしていて、僕は社外の人間として、それを一緒に進めています。ものを作ることについては、むしろこっちが教わる側。ただ、ブランドづくりのほうは、お2人にとって初めてでした。
だから僕は、自分の考え方とやり方を説明する形で打ち合わせをしていました。それが親切だと思っていたし、その場はいつもいい空気で終わっていました。
でも、終わったあとに思うのは、毎回おなじことでした。

教える形は、こっちが気持ちよかっただけ

説明する側って、けっこう気持ちがいいんですよね。
聞かれたことには答えられるし、専門の話をしていれば場は持つ。相手も「なるほど」と言ってくれる。1時間しっかり話して、前に進んだ気になって終わる。
でも、次の打ち合わせではまた、前回と同じあたりから話が始まっていたりします。
これ、僕の説明が下手だったという話ではないと思うんです。その場ではちゃんと分かってもらえている。ただ、分かっただけで、お2人が自分で動きだすところまでは行っていなかった。
外部の人に入ってもらった経験があるなら、この感じに覚えがあるんじゃないでしょうか。話を聞いているあいだは腑に落ちるのに、自分たちだけになった途端、手が動かない。何から手をつければいいのか分からなくて、そのまま次の打ち合わせを迎える。それでまた説明を聞いて、また腑に落ちて、また止まる。
引っかかっていたのは、説明の中身ではなくて、打ち合わせで喋っているのが、ずっと僕だったことのほうでした。

喋る人を変えて、ひとつだけお願いした

で、ある回から、僕が説明する時間を減らしました。代わりに、お2人に喋ってもらう時間にしたんです。
ルールを決めたわけではありません。順番に発表してもらうとか、そういう形式にもしていない。ただ、進め方を変えるときに、ひとつだけお願いをしました。
自分の考えを、他人の考えを読むつもりで見直して、疑問に思うところがないか自分で確かめてみてください、と。
というのも、頭の中だけで考えていると、どうしても都合のいい説明で自分を納得させてしまうんですよね。自分では分かっているつもりだったのに、いざ人に説明しようとしたらうまく喋れなかった、というのはよくある話で。お2人ともいろいろ考えておられるので、それを口に出してもらうのがいいのかな、と思ったんです。
お願いしたのは、それだけです。

一呼吸置いて、自分で考えるようになった

次の回に、進め方が変わってどうだったかを聞いてみました。
まず、お1人めから返ってきたのがこれでした。
「やりやすくなったっていうか、ちょっとクリアになってきた」 「自分で自分の疑問点を投げかけるように客観的に見る、っていう作業をしてみたら、意外と疑問点が出てくるな、と」
そのあとに続いた一言が、僕はいちばん大きかったと思っています。新しい商品のアイデアを見たときの話です。
「前だと、いいっすね、って感じでノリで行っちゃったんです。それが、あれ、ちょっと待てよ、これってそもそも合ってるんか、と一旦呼吸を置いて考えられるようになった」
呼吸を置く。
聞いた瞬間に、変わったのはそこか、と思いました。ノリで進むこと自体が悪いわけじゃない。ただ、いいと思った案を採用するまでのあいだに、一拍が入るようになった。しかもその一拍を入れているのは、僕ではなく本人です。
もう1人の方は、こう言っていました。
「出していただいた案を、感心してそのまま採用してしまうんじゃなくて、もっと自分ごととして、どうしたいかを考えないといけない」 「もっと自分の言葉で、自分の考えで書いていかないと」
やりやすくなった話をしていたご本人たちは、そこから自分たちのことを「停滞してたんだろうな」とも振り返っていました。止まっていたことに、止まっている最中は気づけていない。誰かの説明を聞いているあいだは、動いている感じがしてしまうからだと思います。

効いてくるのは、打ち合わせの外

打ち合わせの合間にやっていることも、変わっていました。
その日の打ち合わせでは、ブランドの中心にしたい言葉について、ご本人が考えを書き込んでいて、その量が明らかに増えていました。思わず「めっちゃ書かれてましたね」と言ったくらいです。しかも、答えが出ていない疑問がそのまま並んでいる。「疑問に対して答えがまだ見つかってないところもいっぱいあるんですけど」と、ご本人も言っていました。
これ、僕としてはむしろいい状態だと思っています。前は、疑問そのものが出てこなかったので。答えの出ていない疑問が並ぶということは、自分の言葉で考えはじめているということです。
ブランドづくり全体では、どのくらい進んだと感じているかも聞いてみました。
「7割8割まではぜんぜん行ってません。ただ、方針の部分は、前は流されているところがあった。今はそれがだいぶない」
完成には、まだ届いていない。それでも、前のように流されず、自分たちで方針を考えられるようになってきた。
打ち合わせでのやり取りが、そのあと自分たちで考えるときにも役に立っていたんやなと思います。

おわりに

こう書くと、とにかく喋らせればいいという話に見えるかもしれませんが、そういうことでもないと思っています。
説明が要る場面はもちろんありますし、相手にもよります。黙って考えたい人に喋らせても、たぶん何も出てこない。僕自身、今回のことを一般的な正解だとは思っていなくて、あのお2人の話を聞いた感じ、変えてみたやり方はとりあえず悪くはなかったな、というくらいの手応えです。
ただ、外部の人を入れたのに進まない、という状態に心当たりがあるなら、説明の中身を疑うより先に、次の打ち合わせで自分たちがどれくらい喋っているかを見てみてください。ほとんど聞き役になっているなら、原因はそこかもしれません。
社内で誰かを巻き込みたいときも、同じだと思います。こちらが説明する時間だけでなく、相手が自分の考えを話す時間があるかどうか。
打ち合わせが終わったあと、うまく説明できたかだけじゃなく、相手が自分の考えを話せる時間になっていたか。そこも振り返るようにしています。よかったら、気軽に声をかけてください。

この記事は、実際の打ち合わせをもとにしていますが、お相手の会社名やブランドの内容は伏せています。