プロダクトデザインの費用|追加は、先に相談してもらう

「勝手に動いておいて、これだけかかりましたと請求する。それは絶対におかしいので」
打ち合わせの終わりごろ、費用の話になって、僕はそう言いました。
お相手は、自分の仕事で困っていたことを解決する道具を、はじめて自分で作った方です。ものづくりが本業の人ではありません。道具そのものは形になっていて、あとはこれをどうやって世に出すか、というところで止まっていました。
その方が最後に切り出したのが、費用のことでした。「率直に言うと、やっぱり費用のところやと思うんですね」と。
金額の話は、もちろんしました。ただ、この日いちばん話したのは金額そのものではなくて、あとから費用が増えそうになったとき、どうするか、ということでした。
費用が怖いのは、最初の見積じゃなくて、そのあと
見積を出して、納得してもらって、発注してもらう。少なくともその時点では、金額を見たうえで決められます。
こじれるのは、そのあとです。プロジェクトが始まってから「これもお願いしたい」という話が出たり、想定していなかったことが起きたりして、最初の見積に入っていない作業が出てきます。
その方は打ち合わせの中で、何度か自分のことを素人だと言っていました。「そんな全然分かってないんですよ」と。どこでどうやって売れるのか、売るためには何がいるのか、いろいろ調べながら手探りでやっている、と言っていました。
右も左も分からない状態で外部に頼むとき、怖いのは金額そのものじゃないと思うんです。頼んだあと、自分の見えないところで話が進んで、気づいたら請求が増えていることです。デザインの仕事は外から見えにくいので、何にどれだけかかるのか、頼む側には判断する材料が少ない。
増えそうなときは、事後報告じゃなく事前相談
だから僕は、追加の費用が必要になりそうになったら、その時点でお伝えしています。
なぜ追加の費用がかかるのかを説明して、承諾をもらってから動きます。
順番が逆になると、さっきの怖さがそのまま現実になります。動いたあとで「これだけかかりました」と請求されたら、頼んだ側からすれば、勝手に動いたんだから払わない、という言い分も立ちます。そうなると、お金の話がそのままトラブルになります。
追加費用が発生しそうなときこそ、動く前に言う。 事後報告になった時点で、それはもう相談ではありません。
口で言うだけにしない。残る形にする
ただ、これを口頭だけで済ませると、あとで食い違います。お互い悪気がなくても、それぞれの頭にあるものがズレている事もあります。
「これは追加になりますとお伝えしましたよね」「いや、聞いていません」。こうなると水掛け論で、金額の問題ではなく信用の問題になってしまいます。
なので、打ち合わせで話したことは、そのあとメールに残しておきます。大げさな書面じゃなくていいです。「次はこれをやります」「これは追加になります。金額はこれくらいです」の2行で足ります。
これがあれば、少なくとも言った言わないを減らせます。
先に言われれば、頼む側にも選べる余地がある
事前に相談するのは、こちらの都合のためだけではありません。頼む側に、選択肢ができるからです。
たとえば「これもお願いしたい」という話が出たとします。対応はできますが、追加の費用になります、と先に伝える。すると頼む側は、追加を払うか、今回はやめておくか、それとも「急がないので合間合間でやってくれないか」と条件のほうを変えるか、そこから選べます。
事前に選択できることが重要だと思います。事後報告だと、払うか揉めるかしか残っていません。
できないことも、同じタイミングで言う
同じ日、スケジュールの話にもなりました。ほぼまっさらな今の状態から、2、3ヶ月で売れる形にしたい。それが先方の希望でした。
これまでの経験からすると、たぶんなんとかなります。ただ、このプロジェクトは僕ひとりで進めることはできません。お客さんや工場のスケジュールも絡んできます。だから、行けそうな気はしていても「間に合うかどうかは、お約束できないです」と伝えました。
できるか分からないことを言わずにおくと、あとで困るのは頼んだ側です。都合の悪いことほど、先に言います。
おわりに
正直なところ、ここまで書いてきたことは、僕にとっては当たり前のことです。勝手に動いて請求しない。増えるなら先に言う。それだけの話で、わざわざ記事にするようなことでもない気がしていました。
でもあの日、費用のことを気にしているお相手を見て、当たり前じゃないんだな、と思いました。気にしていたのは、金額が高いか安いかではなかったんです。話を進めていくうちに、あれもこれもと費用が増えていくんじゃないか。そこが心配だったんです。
なので、これは頼む側から先に言ってしまっていいと思います。
「増えそうなときは、動く前に教えてください」。最初にそうお願いしておく。ちゃんとやっている相手なら、助かると思います。
費用が心配だと伝えるのは、失礼でも何でもありません。そこで面倒くさそうな顔をされたなら、それはそれで分かることがあります。
費用が怖いかどうかは、金額の大小じゃなくて、決まっていく過程が見えるかどうかで変わると思っています。よかったら、気軽に声をかけてください。
この記事は、実際の打ち合わせをもとにしていますが、お相手の会社名や商品の内容は伏せています。
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