【口コミ】を利用する【デザイン】とは?|広告宣伝との違いをプロダクトデザイナーが解説

口コミを利用するデザインのポイント

はじめに

広告やSNSが浸透した現代、自然な口コミ(クチコミ)でブランドや商品が広がる力は一段と重要視されています。私はプロダクトデザイナーとしてさまざまな企業のブランディングデザイン支援に携わってきましたが、そこで強く感じるのが「伝えたくなるデザイン」の威力です。うまく機能すれば、広告コストの 削減を図りつつ、口コミを増やすデザイン戦略として大きな成果を生む可能性があります。
本記事では、まず広告と口コミの違い、そして“伝えたくなるデザイン”のメリットを前半で整理したうえで、FedEx・Amazon・Pepsiのロゴ事例を中心に、職人技や環境配慮素材、パッケージやグラフィックの“仕掛け”など、「思わず誰かに教えたくなる」デザイン要素を紹介します。

はじめに1. 広告と口コミの違い・コスト面のメリット1-1. 広告は費用がかかるが即効性アリ1-2. 口コミはほぼ無料&信頼度が高い2. “伝えたくなるデザイン”のメリット2-1. 広告費を抑えながら拡散2-2. 高い信頼性と長期的な効果2-3. ブランド価値やファン化を促進3. 「伝えたくなるデザイン」とは?3-1. 単なる美しさではなく“ストーリー”や“仕掛け”を持つ3-2. 広告に頼らず自然に広がる強み4. 実例①:FedExのロゴに隠された矢印4-1. 矢印が象徴する「前進」と「正確性」4-2. 口コミがもたらす効果5. 実例②:AmazonのAからZを結ぶスマイル5-1. 豊富な品揃えをシンプルな矢印で表現5-2. ロゴ自体が“わかりやすいストーリー”に6. 実例③:Pepsiのロゴ刷新(2008年)6-1. 1億円かけた謎めいた資料6-2. “謎”が誘発する口コミとユーザー参加7. 職人技や環境配慮を活かす“ものづくりストーリー”7-1. Appleが見せた製造へのこだわり7-2. 日本の伝統・職人技を織り込む7-3. 環境配慮素材で共感を広げる8. パッケージ・グラフィックで誘う口コミ8-1. 言葉遊び・隠しメッセージ8-2. キットカットの受験応援パッケージ8-3. Tobleroneの三角柱パッケージ8-4. Mujiの“無”を追求する世界観8-5. IKEAの組み立て体験をシェア9. ギター職人×iPhoneケース|異業種コラボが生んだ“語りたくなる”製品10. まとめ|“伝えたくなるデザイン”を実装しようエンディング:プロダクトデザイナーとしてのご提案

1. 広告と口コミの違い・コスト面のメリット

1-1. 広告は費用がかかるが即効性アリ

  • 企業主導で一方的に情報を発信
  • 多額の予算を使えば短期的にリーチを拡大できる反面、押し付け感を持たれがち
  • 広告コスト削減の課題を抱える企業も多い
 

1-2. 口コミはほぼ無料&信頼度が高い

  • ユーザー同士のリアルな体験談なので、費用をかけずに広がる
  • 身近な人からの情報として受け取るため、説得力や共感度が高い
  • 狙い通りに成功させるのは難しいが、当たると広告以上の爆発力が期待できる

2. “伝えたくなるデザイン”のメリット

2-1. 広告費を抑えながら拡散

ロゴやパッケージに仕掛けやストーリーを埋め込むことで、ユーザーが「実はね…」と自発的に情報を広めてくれる可能性が高まり、広告費の削減にもつながります。

2-2. 高い信頼性と長期的な効果

口コミは企業主導の押し売り感が少なく、第三者の“生の声”として伝わるため信頼度が高い。いったん話題になると、そのネタが長期的に語り継がれるケースも珍しくありません。

2-3. ブランド価値やファン化を促進

「実はこんな意味がある」「実は○○にこだわっている」などストーリー性を知ると、ユーザーは愛着を抱きやすくなり、ブランドのファンとして継続的に応援してくれるようになります。

3. 「伝えたくなるデザイン」とは?

3-1. 単なる美しさではなく“ストーリー”や“仕掛け”を持つ

製品の外観やロゴ、パッケージがいくら洗練されていても、単に「キレイだね」で終わってしまうと口コミは生まれにくいものです。“驚き”や“発見”を与える隠し要素やストーリー性を備えて初めて、人は「これは誰かに伝えたい!」という衝動を覚えるのです。

3-2. 広告に頼らず自然に広がる強み

企業がCM・SNS広告を大々的に打たなくても、ユーザー間の会話やSNS投稿で商品やブランドが自然拡大していく。これが“伝えたくなるデザイン”が持つ口コミを増やすデザイン戦略としての最たる強みです。

4. 実例①:FedExのロゴに隠された矢印

4-1. 矢印が象徴する「前進」と「正確性」

FedExのロゴ(1994年ごろに導入)には、“E”と“x”の間に矢印が隠されています。「前進」「スピード」「正確性」を表すこの矢印、指摘されると「本当だ!」と気づき、周囲に教えたくなる仕掛けとなっています。

4-2. 口コミがもたらす効果

一度ロゴの秘密を知ると、「知ってる? FedExのロゴには…」とつい誰かに話したくなる。こうした“発見の喜び”がブランドイメージや認知度を大きく向上させるわけです。
FedEX

5. 実例②:AmazonのAからZを結ぶスマイル

5-1. 豊富な品揃えをシンプルな矢印で表現

Amazonのロゴには、「AからZまで揃っている」ことをシンプルな矢印で示し、同時に矢印がスマイルにも見えるため「顧客満足」をイメージさせます。

5-2. ロゴ自体が“わかりやすいストーリー”に

「実はAからZまで表している」「実は笑顔なんだよ」と知れば、ユーザー同士で語りたくなる“わかりやすいストーリー”が生まれ、企業が大きく宣伝しなくても自然なクチコミとして広がってきた好例です。

6. 実例③:Pepsiのロゴ刷新(2008年)

6-1. 1億円かけた謎めいた資料

Pepsiは2008年に1億円を投じてロゴを刷新。その際、黄金比を応用した「Pepsi Ratio」などの理論を27ページにわたりまとめた『BREATHTAKING Design Strategy』を公開し、まるで秘密計画書のようなミステリアスさが話題となりました。『BREATHTAKING Design Strategy』と検索すると英語ですが当時の資料が見つかると思います。

6-2. “謎”が誘発する口コミとユーザー参加

「そこまでする必要があるの?」という疑問さえ“ネタ”として拡散され、話題となりました。加えて、Pepsi Refresh Projectのようなユーザー参加型キャンペーンにより、人々が面白がって自発的にロゴの噂を広める構図ができあがりました。

7. 職人技や環境配慮を活かす“ものづくりストーリー”

7-1. Appleが見せた製造へのこだわり

かつてAppleは、新製品発表時にアルミ削り出しやガラス加工の詳細を積極的に公開。これにより、ただの製品ではなく「職人のようなこだわり」を知る楽しさが口コミを生み、「Apple製品は特別だ」という認知が進みました。

7-2. 日本の伝統・職人技を織り込む

近年は、地域の伝統技術や工芸をコンセプトにした商品が注目されています。使うほど味わいが増す塗りや織りの技法、“ここだけの話”を知ると「これって実は○○の技なんだよ」と話したくなる要素になります。

7-3. 環境配慮素材で共感を広げる

海洋プラスチックやリサイクル素材、生分解性プラスチックなどを取り入れる企業も増えています。「こんなに環境に配慮しているんだ」とユーザーが感動し、SNSなどで発信することで、自然と口コミが生まれやすいのが特長です。

8. パッケージ・グラフィックで誘う口コミ

8-1. 言葉遊び・隠しメッセージ

  • 英語かと思ったらローマ字表記の方言 「TOHOKU MADE」(とうほくまで)など、気づいたときのギャップが強い印象を残す
  • 縦読み・斜め読みで別のフレーズ 一見普通のコピーが「ARIGATO」「LOVE」を浮かび上がらせるなど、ユーザー自身で“謎解き”する楽しさを提供

8-2. キットカットの受験応援パッケージ

「きっと勝つ」という語呂合わせを形にしたハガキ型パッケージが、受験生への贈り物として定着。SNS投稿も増え、「受験といえばキットカット」の認知が確立されました。

8-3. Tobleroneの三角柱パッケージ

スイスのチョコレート「Toblerone」は三角柱のパッケージに山が描かれていますが、よく見るとクマが隠れています。「ここにクマがいるんだよ」と周囲に教えたくなる仕掛けです。

8-4. Mujiの“無”を追求する世界観

ロゴや装飾を可能な限り排したパッケージ戦略が逆に強烈な個性に。「シンプルで必要十分」という独特のコンセプトを、多くのファンが語りたくなります。

8-5. IKEAの組み立て体験をシェア

フラットパック方式で家具を持ち帰り、自分で組み立てるDIY感覚がユーザーのSNS発信ネタに。「安く手に入るうえ、組み立ても楽しい」と口コミが拡散し、さらなる認知アップへ。

9. ギター職人×iPhoneケース|異業種コラボが生んだ“語りたくなる”製品

実は私も、ギター職人の塗装技術を活かした“天然木のiPhoneケース”を開発した経験があります。ギター製作の端材を再利用し、サンバースト塗装などの手法で独特の高級感を持たせ、価格競争に陥りがちなスマホケース市場で差別化を図りました。
  • ここが“伝えたくなる”ポイント
      1. 「ギターと同じ木材で作られている」→ 楽器好きが思わず食いつく
      1. 「端材の再利用で一点モノの価値」→ 廃材を宝に変えるストーリー性
      1. 「外しづらさ解消に“ピック”同梱」→ 想定外の付加価値がブランド要素を引き立てる
詳しい開発ストーリーや製造工程などはこちらの記事にまとめています。 価格以外の付加価値で勝負したい方はぜひ参考にしてみてください。

10. まとめ|“伝えたくなるデザイン”を実装しよう

  1. 広告 vs. 口コミ
      • 広告は即効性はあるが費用が高い
      • 口コミはほぼ無料・高信頼だが、狙い通りに生むのは難易度が高い
      • “伝えたくなるデザイン”によってクチコミ効果を増大できる
  1. FedEx・Amazon・Pepsiに見る仕掛け
      • 隠された矢印やスマイル、ミステリアスなリブランディングで「へぇ!」を生み出す
  1. 職人技や環境配慮、言葉遊びなど多彩なアプローチ
      • Apple・Muji・IKEAなども含め、ユーザーが自然と話したくなる“驚き”や“ストーリー”を組み込む例
  1. ギター職人×iPhoneケース
      • 異業種コラボによる意外性で付加価値を高め、価格競争から脱却
いずれにしても、最終的にはユーザーに「誰かに教えたい!」と思わせる“体験”があるかどうかです。ロゴ刷新やパッケージ変更だけでなく、製品やサービスの背景、企業姿勢まで含めてトータルに設計し、“語りたくなる仕掛け”を意識してみてください。

エンディング:プロダクトデザイナーとしてのご提案

  • 広告費を抑えてもっと認知を広げたい
  • ロゴやパッケージを刷新し、ユニークな仕掛けを作りたい
  • 職人技や自社の強みをどうアピールすればいいか迷っている
そんなお悩みがあれば、「伝えたくなるデザイン」を一緒に実現してみませんか?ぜひお気軽にご相談ください。ユーザーが思わず語りたくなるストーリー・仕掛けを備えたブランディング戦略を、プロダクトデザイナーの視点で全力でサポートいたします。