製品をデザインする仕事とは?それぞれの違いと企画参加の重要性

デザイン職の違い

はじめに

「プロダクトデザイナー」「工業デザイナー」「インダストリアルデザイナー」 ――どれも似たような響きですが、いざ調べてみると微妙な違いがありそうだと気になる方もいるのではないでしょうか。 呼び名こそ違えど、いずれも“モノづくり”を支えるデザイン職の一種です。 ですが、実際にどう違うのか、なかなかイメージしづらいかもしれません。
 
ここでは、私自身の考えにもとづいてそれぞれの呼称の特徴や共通点をまとめてみました。 さらに、企画段階からデザイナーが関わる重要性や、メーカーでの商品開発経験から得た私の視点も少しだけご紹介します。

1. 「プロダクトデザイナー」ってどんな仕事?

デジタルから日用品まで“製品”を幅広くデザイン

まず「プロダクトデザイナー」という呼び名からは、家電・家具・日用雑貨など、比較的日常生活に密着したモノをデザインする職業をイメージする方が多いかもしれません。私自身も、生活の中で触れるあらゆるモノを対象に、形状・機能・使い勝手・ブランドイメージなど製品の「存在感」をトータルに設計することが多い職業だと思います。
  • 広い守備範囲
    • 家電・雑貨だけでなく、最近ではデジタルプロダクト(アプリやWebサービス)のUI/UXを担当するプロダクトデザイナーも増えています。デザインの守備範囲が広いぶん、様々な分野の知識やトレンドを取り入れる柔軟性が求められます。
  • 商品企画や商品開発との連動
    • プロダクトデザイナーは、単にカタチを作るだけでなく、どんな製品コンセプトやユーザー体験を提供するのかを考えるケースが多いと思います。日常の使い勝手はもちろん、場合によってはサービスとの連携(アプリやWebとの接続)まで踏まえて開発を進めることも。
  • 企画段階から参画するケースも増加傾向
    • とはいえ、私の実感としては、まだまだ企画段階から参加できるデザイナーは少ないのが実情です。一般的にはコンセプトや仕様が固まったあとに、最終的な形を考えるフェーズで召集されることも多い印象があります。

2. 「工業デザイナー」はどう違う?

大量生産を前提とした“工業製品”のデザイン

「工業デザイナー」という呼び名を聞くと、自動車や家電など“大量生産”のイメージが強いです。 私は、「工業製品」を扱い、金型や生産ライン、素材選定など、生産プロセスをふまえたデザイン調整が得意な職業だと考えています。
  • 商品開発の現場でコストや製造効率を考慮
    • 工業デザイナーは、素材選定や耐久性、環境負荷などを踏まえつつ、生産コストとデザインのバランスをとることが多いように思います。社内外のエンジニアや開発スタッフと連携しながら、コンセプトを形にしていく工程が肝になるでしょう。
  • 歴史的背景としての工業デザイン
    • 戦後の高度経済成長期から“工業製品”が急速に普及した流れで、「工業デザイン」という職種名が根づいたと言われることもあります。私の周辺でも、大手メーカーのデザイナーを指すときに「工業デザイナー」と呼ぶことが多いですね。

3. 「インダストリアルデザイナー」は英語版“工業デザイナー”?

海外や外資系では“Industrial Designer”が一般的

「インダストリアルデザイナー」は英語圏で使われる“Industrial Designer”の翻訳です。 私が見ている限り、意味合いとしては工業デザイナーとほとんど同じで、大量生産のプロダクトや機械設計をメインにする職業を指すことが多いように感じます。
  • 呼び方の違いは言語・文化の違い企業が海外案件を多く抱えていたり、外資系の風土だったりすると「インダストリアルデザイナー」という名称が定着している印象です。
  • 工業デザイナーとの違いはほぼ無い具体的な業務内容はほぼ共通しており、大きな隔たりはないのではないかと思います。

4. 結局、この3つの職業に大きな違いはあるの?

どの呼び名でもゴールは同じ

私はこれまで、どの呼び方でも以下のようなプロセスを踏む点は共通していると感じています。
  1. 課題の洗い出し(ユーザー、マーケットリサーチ)
  1. 商品企画・商品開発との連携でコンセプト確立
  1. デザイン案の検討(形状・素材・操作性・カラーなど)
  1. プロトタイピングや試作を通して検証
  1. 量産・出荷に向けた最終調整(コスト・品質管理など)
「プロダクトデザイナー」「工業デザイナー」「インダストリアルデザイナー」という呼び名の違いはあれ、最終的に「ユーザーに価値のある製品をデザインする」というゴールは同じだと思います。

私個人の感覚:呼び名は“対象領域の違い”を示すだけ

  • プロダクトデザイナー 家具や雑貨、デジタル機器など幅広い製品を手掛ける。UI/UX領域に強い人も多い。
  • 工業デザイナー 自動車や家電、重工業系など大規模に生産される製品がメイン。
  • インダストリアルデザイナー 海外では標準的な職業名。工業デザイナーとほぼ同義。
あくまでも私個人の感覚ですが、企業や国・文化圏によって呼称が違うだけで、実務で求められるスキルは重複していると考えています。

5. 「商品企画」「商品開発」との関わり

企画・開発への参加は一部の企業に限定?

大手メーカーの場合、商品企画~開発~デザインのフローがかなり分業化されているところも少なくありません。そこでは「プロダクトデザイナー」は後工程での関与が中心になりがちです。もちろん、先進的なメーカーでは初期段階からデザイナーが入り込み、商品コンセプトを共創する事例も増えてきていますが、まだ業界全体で見れば限定的かもしれません。

6. デザイナーが“企画段階から参加”する重要性

なぜ企画初期からの連携が必要?

現状では多くの会社で、デザイナーが企画段階から参画できる割合はまだそう多くないように思います。 しかし、アイデアの源泉としてデザイナーの視点は欠かせないと、私は考えています。 以下のポイントがその理由です。
  • ユーザー体験を深く理解し、具体化できるデザイナーは“ユーザービリティ”を考えながら形に落とし込むことを得意としています。早期から参加することで、ユーザーファーストの企画を立てやすくなるはずです。
  • 試作・検証のサイクルを加速させるデザイナーが主体となってプロトタイプを作ることで、実際に触れるモックアップを素早く用意できます。机上のプランだけでなく、リアルな体験をベースに改善点を洗い出せるため、開発スピードが上がることが多いです。
結果として商品開発のクオリティ向上開発期間の短縮が見込めるので、私は企画からデザイナーが関わることが理想的だと思っています。

7. 私自身のメーカーでの商品開発経験

商品企画にも関われるデザイナーとして

私は、メーカーでの商品開発の経験を持っています。 そこで学んだのは、デザイナーでも企画・開発フェーズで提案やアイデア出しが十分可能だということです。
  • 課題発見からコンセプトづくりまで開発の初期段階でこそ、ユーザーリサーチや課題設定が重視されます。そこで私自身も、これまで培ったデザイン視点を活かして企画に参加してきました。
  • デザインとビジネスをつなぐ“ブリッジ”の役割デザイナーは、ビジュアルイメージを提示するだけでなく、市場のトレンドやブランド戦略といったビジネス的な観点も理解する必要があります。私の経験では、企画会議から入り込むことで、各部門とのすり合わせやプロトタイプ作成もスムーズに進めやすかったです。
デザイナーが企画段階から積極的に関われば、よりユーザーに刺さるコンセプトや完成度の高い製品が生まれる可能性が高まる――と、私は実感しています。

8. まとめ:呼び方は違っても、目指すゴールは同じ

最終的に私が思うのは、どの呼び名も“より良いモノづくりを通じて、ユーザーに貢献する”という根本的な目的は一緒だということです。
  • プロダクトデザイナー:多様な領域と関わりやすい
  • 工業デザイナー:工業製品特有の生産プロセスに精通
  • インダストリアルデザイナー:海外標準の呼称であり工業デザイナーとほぼ同義
呼び名によって多少の得意分野やアプローチは変わるかもしれませんが、それも会社やプロジェクトごとに異なります。大事なのは「自分がどんな製品やサービスを手がけたいのか」を明確にしておくことじゃないかと思います。

どれも“ユーザーに喜ばれるもの”を作る仕事

私個人としては、どの職業名であっても本質は同じ。「商品企画」「商品開発」も含めたものづくりのプロセス全体を把握し、ユーザーが手にしたときに感動できる体験を設計する――それこそが「デザイン」の要だと感じています。

あとがき

以上、私個人の視点で「プロダクトデザイナー」「工業デザイナー」「インダストリアルデザイナー」の違いと共通点をまとめてみました。呼び方は違えど、結局は“人々の暮らしや体験を豊かにする”という目的に変わりはありません。もしこれらの職業に興味を持つ方がいれば、自分がどの分野に熱中できそうかを考えてみるのも面白いかもしれませんね。