プラスチック加飾の種類と選び方|プロダクトデザイナーが解説する装飾方法の比較

製品開発において、見た目の印象は非常に重要な要素です。 中でもプラスチック製品は、素材の持つ特徴から「質感」や「高級感」の演出が難しいと言われがちですが、そこを補ってくれるのが”加飾(表面加飾)“という考え方です。
 
この記事では、プロダクトデザイナーとして商品開発に携わる立場から、実際によく使用される3つの加飾方法を紹介し、それぞれの特徴や選び方についてまとめています。 印刷方法や装飾技術の違いによって、仕上がりや印象は大きく変わります。

プラスチック加飾の種類別特徴比較

加飾方法コスト感曲面・凹凸対応色の自由度質感・印象小ロット対応注意点・特性
シルク印刷低〜中△(平面が得意)◎(調色可能)マット〜半光沢◎(版代少なめ)線幅制限あり/グラデーションに不向き
パッド印刷◎(曲面・凹凸に強い)○(調色可能)マット〜半光沢細かいロゴに強い/凹凸への対応力
ホットスタンプ中〜高△(基本は平面)×(既製箔のみ)高級感・金属光沢○(箔・型の選定次第)箔の選定や型の制約あり/段差が出る

各加飾方法の特徴と用途(シルク印刷・パッド印刷・ホットスタンプ)

シルク印刷

シルク印刷は、単色での表現に向いており、色の自由度が高く、細かい調色にも対応できます。 比較的コストを抑えられるため、小ロット生産にも適しています。 グラデーションや写真のような表現には向いていませんが、ロゴやピクトグラムなどに最適です。

パッド印刷

シリコンパッドを用いた印刷方式で、凹凸や曲面にも柔軟に対応できるのが最大の特徴です。 小さなロゴや細かな文字などもシャープに印刷できます。 インクの転写時に色が変化しやすいため、色再現性はやや低めですが、構造に制限がある製品には非常に有効です。

ホットスタンプ

加熱した金型で箔を転写する方法で、メタリックな質感や高級感の演出に優れています。 印刷では表現しにくい金属光沢を与えることができますが、使用する箔や型に制約があり、段差が生じやすいという特徴もあります。

プラスチック加飾の選び方|プロダクトデザイナーの判断基準

加飾方法を選ぶ際、「シルク印刷とパッド印刷、どっちがいいのか」といったご相談を受けることがあります。
ただ、私の場合は「どの手法を使うか」よりも、まず「どんな印象を与えたいのか」を優先して考えるようにしています。
たとえば──
  • 高級感を出したい → ホットスタンプ
  • ロゴをくっきり印刷したい → シルクまたはパッド
  • 曲面であればパッド、でも雰囲気重視ならあえてシルクを選ぶこともある
 
加飾の選定は、図面や仕様書だけでは決めきれないことが多く、私はいつも、製品に求められる印象や制約条件をもとに、協力会社とすり合わせながら判断しています。
 
特に、インクの条件や印刷面の形状、パッドや版の種類、ロット数などが複雑に絡むため、細かな調整や技術的な判断は「実際にどう仕上がるか」を想定しながら、一緒に最適解を探っていくプロセスが欠かせません。
 
そのため、「印象をどう見せたいか」をしっかり共有できる協力会社の存在はとても大切です。 加飾方法の選定では、「誰に相談するか」「どうやってすり合わせるか」も含めて、デザインの一部だと私は考えています。

加飾方法の比較と選び方のポイントまとめ

加飾は製品の魅力を引き上げる重要なデザイン要素です。
それぞれの手法に得意・不得意があるため、特徴を理解した上で、デザインの目的と照らし合わせて選定することが大切です。
今後も他の加飾方法(例:シボ加工など)についても記事を追加していく予定ですので、ぜひブックマークしてご活用ください。